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モテる女の友達だった

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モテる女の友達だった私。

正直言って、得だった。

あれは、高校二年から卒業まで。

彼女はモテた。モテにモテまくっていた。

体操部に所属し、すらりと身長も程よく高く、すっきりしていた。

小麦色の肌は、笑うと一層白い歯がきれいで「芸能人は歯が命!」というCMはあながち嘘ではなく、華がある。

しかも、だいたい笑っている。

そんな彼女をほおっておくはずもなく、いつも周りは男子だけでなく華やかな女子も取り巻いていたんだ。

 

高校時代の私

 

一方、私はというと高校入学時点ですでに暗黒時代を迎えていた。

一番の理由は、成績が悪かったということ。

中学までは、なんとなく中間期末の追い込みをするとそこそこの成績をおさめていたが、なにせ勉強する習慣がなく、毎日薄っぺらいカバンをもって通学するほど日々の勉強はしなかった。

それなのに、中三の三学期少し成績が上がったもんだから、高校のレベルを一つ上げてしまった。

運よく合格した高校は、「自由がある!」といわれていたので決めちゃったんだよね。

確かに、「自由」はあった。

先輩に有名な作家も漫画家もバンドマンも排出する校風なので。

凡人の私は、入学してすぐのテストで後ろに何人かしかいない順位。

つまり、最下位。

すれ違う人みんな「自分より頭がいいやん」とお先真っ暗なスタート。

中学の担任が、唐十郎さんの赤テントのことを熱心に語るもんだから、演劇部に入部。

そこで出会った、牛乳瓶の底のような眼鏡をかけたまじめな友達がいたが、彼氏ができすぐに男と女の関係になった。

そのことを微に入り細に入り話して聞かせる。

はじめは「やるやんか」と面白がってたけど、細かいのよ。

しかも、高校生の性衝動は激しいのよ。

お腹いっぱいでもう勘弁してくれ状態でして。

お耳だけ肥えました。

そして、新人公演だけ出演して辞めさせてもらいました。

時間ができたが、頭が悪いコンプレックスとモテないことで、面白くない一年間だった。



華やかな彼女

 

二年生になり、あのモテる女となぜか気が合いいつも一緒にいるようになった。

モテるとは、すごい!

通学路がいったん繁華街に出て、それからバスを乗り換え学校に行くんだけど。

乗り換えの繁華街があると、そこで遊びますよね。

モテる友達といると、なんと商店街のおじさんたちが声をかけてくれる。

一番思い出深いのは、映画館のおじさん。

「おいで、今この映画面白いよ」って私も一緒に誘ってくれる。

只見です。モテ友達がいるときだけだったけど。

映画が終われば、喫茶店に連れて行ってくれてクリームソーダをご馳走してくれる。

さらに、ファンシーショップに行ってサンリオ製品選び放題。

ウチは、厳しかったので不審な持ち物があれば、たちまち万引きでもしてるんじゃないかと疑われそうなので、目立たないような文具を買ってもらった。

「このおじさん、仕事してるのか?」

と、思うほどモテ友達といたときは私たちに付き合ってくれるのだ。

だからと言って、それ以上のことは求めないし、求められようもんなら凹してやるところだった。

二人とも気は強かったな。

 

こんなこともあった。

英語の時間、モテ友達が辞書を忘れていた。

みんな大好きモテ友達だから、すぐ周りが気付いてその子の番に回ってくる前に辞書がバケツリレーのようにコソコソっと回っていた。

運の悪い人間というのはいるもんで、途中で先生に見つかってしまいめちゃくちゃ怒られていた。

たぶん平手を食らったと思う。

かわいそうにその子が忘れたんじゃないんだよ。

でも、モテ友達のせいにはしないところはかっこいい。

先生の怒りを一人で受けて黙っていた。もちろん周りも。

その時間が終わり、休み時間になった。

ここでさらにかっこいいやつ登場。

黙っててもいいのにモテ友達は、わざわざ事の顛末を職員室まで話に行って、頬を腫らしてさわやかに帰ってくる。

まあモテるよね、この潔さ。

 

卒業時

 

彼女の人気は、下学年まで及びファンもできていた。

特に、一学年下の写真部のイケメン二人。

そして、その女友達二人。

さわやかな四人組は、まるで姉を慕うようにことあることに現れた。

そして、卒業式。

彼らからモテ友達と(ついでに)私までメッセージと花束を受け取った。

 

なんか、申し訳ない気持ちいっぱいだったけど、いつも一緒にいる私を無視することはできないもんね。

ごめんね。

でも、いい思い出になりました。

 

モテは幸せを連れてくる

 

一緒にいるだけですてきなモテ友達。

彼女には、それなりの魅力があったんだね。

現に私を楽しませてくれた。

モテ友達の元カレには、妹の高校入学時の教材購入に車を出してくれた。

 

私自身は、書けるほどの恋愛経験はないけど彼女のおかげで「人の魅力」に気づかせてもらったよ。

 

卒業後は、さっさと結婚して一人の女の子、そして二人の双子の男の子を産んだんだけど、そのときまだ未婚で仕事していた友達三人で時々遊びに行ってたな。

しかも、彼女も仕事してた!できる女はできる!(当たり前かw)

カレーライスをごちそうになり、あと片づけはさせてもらったけど…

その間、彼女は双子の男の子に両乳含ませて、幸せそうに「ありがとう!」って声かけてくれた。



もう、あれから何十年経つだろうか。

年賀状だけのやり取りだったけど、数年前から返信が来なくなった。

 

ただ、ただ元気だといいけど。

ちっとも楽しくない高校時代に私の力ではないけど、楽しい思い出をくれた陽気な彼女。