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『ルビンの壺が割れた』 宿野かほる 著 日本一の大どんでん返し

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書店のポップに目が留まり購入した本。

こんな出会いが、街の書店にはあるのですよね。

 

日本一の大どんでん返しと断言したい…という帯

 

結城未帆子様

 

というメッセージから始まる、往復書簡。

水谷一馬なる人物が、フェイスブックを何気なく見ていた時に未帆子という名前を見つけた。

ありそうで、実際なかなか見かけない名前の主に思い切ってメッセージを送ったというところから始まる物語です。

そこに窓ガラスに写りこんだ写真をパソコンに取り込み、きっと「貴女」だと思いメッセージを送ったということ。

返信不要です。

とはいうものの、二通目、三通目と送ってしまう。

返信はない。

でも、一方的なメッセージの中で彼の最近の生活状況、五十二歳だという年齢、何とか働いているようだが、とても幸せそうではない孤独な様子がうかがえます。

 

彼女とは、大学時代の演劇部の部長、新入生というところから出会います。

そして、二人は結婚式を挙げる予定だったが、当日、彼女は来ない。

それから音信不通になってしまう。

謎はあるものの、時間の経過でそれぞれの人生を重ねている。

 

文体もていねいで落ちついているが。

そこから、「大どんでん返し」にどう導かれるのだろうかと思う。

 

水谷一馬さま

 

一馬の三通目にしてやっと、未帆子から返信が来る。

さすがに、初期の胃ガンが見つかったと書いてあれば、返信もするだろうな。

など考えながら、読み進める。

未帆子もまた、その文面がていねいで時間の長さを感じさせ、落ち着いた大人のメッセージが届く。

水谷の病気を気遣う言葉。

大学生活で同じ演劇部の先輩、後輩の仲だった思い出など。

 

宛名が微妙に変わってくる

 

その時の心境なのか、「未帆子様」、「一馬さま」と書いたり、姓名書いたり一貫してないのもこの話が、情熱的だった二人だけの話ではなく、周りの人も巻き込んでの話だったり、生い立ちだったりすることが関係しているようなのです。

 

どうも、人や事柄は一面で判断できるものではなく、多面性でできているようです。

当たり前のことながら、人の心の深淵は計り知れないことをまざまざと考えさせられました。

 

表があれば裏のあり、また混在もあり



そして、謎が多くあぶりだされるのですが、最後に向けてこれでもか、これでもかの展開で、最後はまさかの結末が待っています。

 

解説では、西山奈々子さんが

”先輩編集者は、「万華鏡のような作品だ」と評していましたが、言いえて妙だと思います。”

と書いていましたが、読み手によってもさまざまな読後感を持つものではないでしょうか。どのジャンルにもはいらないような。

 

作家 宿野かほるという人

2017年、書下ろし小説の本書でデビュー。翌年、『はるか』を出版。

プロフィールを明かさない、覆面作家となっている。

もし気になった方は、読後に検索してみたらいかがかと思います。

小さな(いや、かなりの)モヤモヤを覚えていますが…(苦笑)

 

本書は

最後の一ページは、絶対読まないで最初から読んでほしいです。

170ページ、ペロッと読めます

 

悔しいけど、次はこれ読んでみます(笑)